デジタルコラージュとUVプリンターの融合 フォトグラファー クスミエリカさん

工作機械コラボ

札幌を中心に北海道で活動するクリエイターを、多彩な工作機械だけでなく情報発信からも応援したいとスタートした「 SHAREGARAGE ~SAPPORO ものづくりコミュニティ~」。今回インタビューのマイクを向けたのは、フォトグラファーのクスミエリカさん。自ら撮影した写真素材を使ったコラージュ作品は、非日常の景観の中にどこか既視感のあるモチーフが混在する不思議なファンタジー世界へと導いてくれます。今回は、クスミさんの作品「変転のコリドー」をSHAREGARAGEのUVプリンターを使って制作していただいた様子をお届けします。また、クスミさんのものづくりの原点や、作品制作へのこだわりなど、とても興味深いお話をたくさん頂いたので合わせてご紹介致します!

 クスミ エリカさん フォトグラファー

1982年生まれ。札幌出身・在住。
自身が体験した“現実”を、時間も空間も異なる写真を幾層にも重ね合わせ、デジタル処理を施した「デジタルコラージュ」という方法を用いて、衰退・死・破壊から、誕生・再生へと変容する狭間や、夢のように断片化した人々や生物の意識の可視化を試みる。誰もが目にすることが可能な現実の風景を再構成することで、非現実な世界でありながらも、それがいま我々が生活する日常の延長線上、あるいは平行線上に存在する世界であることを表現する。フリーランスのフォトグラファー/デザイナー業務の傍ら作家として活動し、様々な展示への出展、個展を開催。

2012年  個展「白の虚像」salon cojica
「ArtWarm10周年記念展-WONDER WONDER」ArtWarm(石狩)
「旅-つなげよう+つながろう」札幌地下歩行空間
2013年 「アートアニュアル2012-2013 アニマルフォトストリート」地下鉄円山公園駅連絡通路
「まちなかアート・クロス・エディション 第8弾 JAZZ展」クロスホテル札幌
「LIVING WITH ART アートと暮らす」大通ビッセ
2014年 北海道文化財団アートスペース企画展Vol.19 クスミエリカ展「ambivalence」 北海道文化財団アートスペース
クスミエリカ・白山郁美 二人展「Parallel」 space SYMBIOSIS
2015年 Sapporo*north2 AWARD ver.SIAF2014 写真部門 最優秀賞
つながろう2015 「森 / FOREST」札幌地下歩行空間
個展「Planter」 KIITOS(キートスヘアデザイン)
FAbULOUS WALL featuring クスミエリカ  FAbULOUS
2016年 「モーション/エモーション ―活性の都市―」 札幌芸術の森美術館
「ART FAIR SAPPORO 2016 出展(ギャラリー門馬)」クロスホテル札幌
「ジ・アートフェア+プリュスーウルトラ2016」 東京・スパイラル
2017年 「FAbULOUS WALL クスミエリカ展」/「INSPIRATION CIRCUS 2017」  FAbULOUS
「変転のコリドー」 ギャラリー門馬

ー写真とはどのようなカタチで出会ったんですか?

「写真に出会ったのは本当に偶然なんです。学生時代、大学祭の会場で迷子になって(笑)。フラフラしてたら写真部が展示会をやっている会場にたどり着いたんです。そこには、ジャズがかかった薄暗い空間にライトアップされたモノクロ写真がずらっと飾られてて、それがすごくカッコよかったんです!それまで私は、写真=家族写真とか、記念写真、友達同士で撮るものだって思ってたんですけど、自分でもこういう風に写真を撮ってみたいなって思って、すぐに入部届けを提出しました。」

ー迷子にならなかったら出会わなかったんですね(笑)。

「本当にそうだと思います。それまで全く写真と接点がなかったので(笑)。そして、1本36枚撮りのモノクロフィルムを渡されて、自分で撮った写真を暗室で現像してプリントする、という一連の流れを最初に教えてくれたんですけど、これめちゃめちゃ面白いなってどんどんハマっていきました。やればやるほど奥が深くて。思い返すときっかけって本当に大したことじゃないんですよね。」

ー最初の作品を作ったきっかけは何だったんですか?

「カメラマンの仕事はもうしてたんですけど、カメラがネガフィルムからデジタルフィルムに移行して、Photoshopを使い始めたのがきっかけですね。写真の色を直したりとか、綺麗な写真を納品するために、ある程度いろいろいじったりとか、自分でやらなきゃいけない作業が増えて。そのうち、Photoshopってこんなにいろんなことができるんだ!面白いなって。たまにPhotoshopのツールアイコンを見ると、暗室で使ってた道具を思い出したりします(笑)。そんな時に、都市とかを見ながら、あのビルに木が茂っていて蔦が巻きついていたりしたら面白いなあ。。。と考えたときに、Photoshopなら出来るじゃん!って。あと、フラストレーションも溜まっていたんです笑。当時駆け出しのカメラマンだったんですが、とにかく綺麗な写真を、美しい写真を撮らなきゃってそのことを必死になってやってきたんです。でも自分でも何か作りたいなっていう欲や鬱憤がたまっていました。

自分のためにというところが一つきっかけで、すっごい廃墟にすっごいおしゃれな格好してファッション撮影したりとか、それの延長線みたいな感じで、Photoshopで加工した写真を組み合わせて作るデジタルコラージュを同時に始めました。」

ー荒廃した都市の姿など、作品のインスピレーションは普段から街を歩いていて頭の中で考えているんですか?

「普段から考えているかっていうとあまり考えてないですね。小さい頃からファンタジーの世界観が好きで、アニメ、漫画、ゲーム、映画に出てくる「衰退した都市」「失われた文明」とかっていう景観に憧れて、行ってみたいなって思ってました。そういう今まで観てきた創作物の世界観を元に、自分の理想の景観のアイデアが出てきます。」

ークスミさんの作品には「生」と「死」、「創造」と「破壊」など、相反する要素をテーマにしていますが、その理由はなんですか?

「私は「写真」自体が相反するものを内包しているメディアだと思っています。連続した時間の流れを、無理やり止めて一枚の平面として保管している。かつ、「光」と「陰」がなければ何も撮れないし、相反する要素がそもそもある中で組み合わせなければならない。だから「静」と「動」、「生」と「死」といったテーマを同時に表現できるんじゃないかって思いました。意識して作品を作るようになったのはここ6、7年ですね。」

ー作品制作の中で苦しいことはありますか?

「本当に自分の作りたいものになっているかどうか、作品に「意味」をちゃんと持たせられているかどうかって常に悩みながら制作しています。コラージュした組み合わせの一つ一つに意味を持たせられているかどうかっていうのが、自分の作品制作に中においてはとても大事なことなんです。ただカッコイイから組み合わせているだけだと作品としての強度が弱いなって思っていて。あとは単純に、本当にこれで正解なのかって、世に出す前にすごい不安になりますね。芸術作品って終わりがないと思っていて、この段階で出していいのか、まだ粗があるんじゃないかって何度も考えます。あと、写真の切り抜きは辛いですね(笑)。組み合わせる時は楽しいんですけど、30時間40時間やってる切り抜きとか、今何やってるんだろう、しんどいーってなります(笑)。」

ー作品を生み出す時は、インスピレーション < コンセプトですか?

「そうですね。最近作品を作る時は、どこで展示するか、そして、私がいま何に注目して何をテーマにして作りたいのかを書き出していきます。デザインの手法にあるマインドマップですね。例えば、※1)ギャラリー門馬で展示した時は、通路状のギャラリーで奥に森があるというスペースだったので、場所先行で考えて作品を作りました。通路は世界と世界を繋ぐもの。その間に色々と変遷していく世界をつくろう。っていうところからどんどん書き出していって作っていった感じですね。」

※1)2017年に開催した個展「変転のコリドー」 ギャラリー門馬

ーアーティストとして個展や展示などを始めたきっかけはなんですか?

「“HAKONIWA”っていう女性フォトグラファー集団に所属していて、年に数回展示会をしていましたが、2012年にsalon cojica さんでやった個展からコラージュではない写真の発表をやめたんです。それは「コラージュだけの方が展示として成立すると思う」ってsalon cojicaの人にアドバイスしていただいたからなんです。確かになって思いました。そこで展示としてみせるっていうのはこういう風にするんだとか、デジタルの作品だとエディションというものをつけた方がいいよとか、そういうアドバイスをもらいながら展示を作っていきました。そこから、作家として自分の作品を出すっていう風になりましたね。」

ーアートフェアではどんなことができるんですか?

「アートフェアに出ると、作品は知ってるけどあまりお話したことがない人と話すきっかけになったり、いろんなギャラリーとか画廊が一つの場所に集まるので、札幌の人たちだけじゃなく、東京とか、名古屋とか大阪とか、海外も含めて、札幌にいながら全国のギャラリーの人たちと喋ったり、出会ったりできます。あと、お客さんも美術好きな人たちが来てくれるので、いろんな分野の方とお話しできるのが面白いですね。」

ーイベントで心がけていることなどありますか?

「観に来てくれた人たちに、なるべく話しかけるようにしています。なので、会期中は時間を作って在廊するようにしています。話しかけられるのが嫌だっていう人もいるので、見極めは大事です(笑)。売ろうと思って話しかけているわけではなく、すごくよく観てくれている人がいると、嬉しくなって話しかけてみたくなってしまって。どこに注目してくれているんだろうって。観る人に完全に任せてしまう、作家側からは何も言わずに全てが自由に感じて欲しいってずっと思ってたんですけど、そうじゃなくて、説明しないと伝わらないこともたくさんあるなって最近思うようになりました。特に私の作品に使われている素材が、全部自分で撮った写真だっていうことも、最近伝わらなくなってきているっていう…(笑)。興味を持って観てくれた人に、説明することによってさらに興味深く面白いなって思って見てもらえることを、いろんな人たちと喋って実感しました。」

ー今後の目標を教えてください。

「ここ数年、札幌を長く離れるっていうことができなかったので、行っても東京とか。なので、もうちょっと南に行って、違う景色や植物を撮りたいなあって思ってます。あと、すごくやってみたいのが、滞在制作、レジデンスですね。その土地でしか作れない作品を作ってみたいです。」

ー今ものづくりをしたいと考えている人に向けてアドバイスをお願いします。

「好きなモノやコトに対して正直であることが大切だと思ってます。私がこの活動をしていて辞めようと思ったことはありません。そもそもやろうと思って始めたわけではなくて、好きだったことを続けているので、一旦休むということはあるんですが、どんな形であれ続けられると思うんです。でも、もうやだ辛い、やめたい!ってなった時は、本当に好きなものと違う部分があったんじゃないかなって…。長く続けていれば、最初の初期動的に「好きだ!」って思った部分とずれてきてる部分がきっと出てきます。それがしんどいってなったら、その部分だけを修正すればいいんです。断念することで、1→10まで積み上げてきたものを一気に0にするって勿体無いじゃないですか…。10まで積み上げてきたけど11にならないからやめるっていうなら、9まで戻って、別のところから1、2を足していいと思うんですよ。作りたい衝動や欲っていうのは人間の根源的なものだと思うので、自分が何が一番好きかとか、何をすれば楽しくいれるのかって考える方が前向きで楽しいんじゃないですかね。」

ーそれでは、クスミさんにUVプリンターを使って作品制作をしていただきたいと思います。

 

Adobe Illustratorで出力データを作成する。

スタッフー「UVプリンターの出力データはAdobe Illustratorで作成します。アートボードはCMYKの W=450mm/H=300mmに設定します。」

クスミさんー「私の作品はRGBのデータなんですが、色調などはどう合わせればいいですか?」

スタッフー「Illustratorの「オブジェクト」メニューの中にある「ラスタライズ」という機能を使えばRGBで取り込んだデータをCMYKに変えることができます。

UVプリンターの出力設定を行う。

スタッフー「UVプリンターは720×720(dpi)~1440×1440(dpi) まで幅広い高解像度印刷ができます。今回はアクリル印刷に最も適した「Graphic1_720×1440(dpi)」の印刷設定で出力します。」

クスミさんー「印刷する素材によって設定を使い分けるんですね。」

印刷スタート

スタッフー「UVプリンターの特徴は、印刷とUVインクの硬化を同時に行うことです。なので、印刷が終わった時には完全に硬化した状態になっています。また、UVライトの強さを調整することで、重ね塗り印刷など、とても面白い印刷表現に対応することができます。」

クスミさんー「使うインクの種類に合わせて仕上げ方法を変えれるんですね。自由度が高い機械ですね。」

印刷終了

クスミさんー「細かい描写まで綺麗に印刷されています!こんなに綺麗に印刷できるとは思っていませんでした。すごいです!」

スタッフー「額装までしていただき、すごく感動しています。。。」

ー今回SHAREGARAGEの工作機械を使用してみてどうでしたか?

「今回のように、作品を試しに作りたい、実験してみたいって衝動的に作れるのがすごくいいなあと思いました。業者さんに小ロットで、例えば1枚だけ作りたいってなると逆に高くなるんですよね。ほかにも、明日必要だっていう緊急時だと、業者さんだと対応していただくことが難しい状況でも、自分が稼働すればスピード解決できちゃうことも強みだなと思いました。私のようにサクッと一回試したい、ちょっと興味がある人なんかは、スタッフさんのサポートもしっかりしているので、安心して利用することができると思います。」

creators file 第5号のクスミエリカさん、ありがとうございました!

SHAREGARAGEではものづくりをするアーティスト、クリエイターの方たちをサポートしていきたいと考えています。UVプリンターやレーザーカッターといった工作機械に興味があるけどどんなことができるのか、自分のやりたいことを実現できるのか、そんな風に考えている方は、幅広い作品制作の可能性を広げるスタッフサポートまでお気軽にご相談ください!

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