欲しいものは自分で作るが原点。 札幌で活躍する女性彫金職人 Nästa rad 奈良知明さん。

インタビュー

札幌を中心に北海道で活動するクリエイターを、多彩な工作機械だけでなく情報発信からも応援したいとスタートした「SHAREGARAGE~SAPPORO ものづくりコミュニティ~」。今回インタビューのマイクを向けたのは彫金職人の奈良知明さん。自身が手がけるブランド「Nästa rad(ナスタラッド)」ではシンプルなデザインから装飾の多いデザインまで幅広い商品を取り扱っており、オーダー制作ではお客様の要望に寄り添う形で結婚指輪の製作もしています。女性らしいファッショナブルな雰囲気と、誠実な職人気質を併せ持った奈良さんの彫金アクセサリーへの想いを語っていただきました。

奈良知明さん 彫金職人
2009 Hatchで彫金を学び始める
2013 東京のアクセサリーブランドe.m.で職人として勤める
2016 札幌で独立。Nästa radを立ち上げる

 

ーさっそくですが、どうして彫金を始めようと思ったんですか?

「欲しい指輪があったんですけど、それが買えるような金額ではなくて(笑)。これは真似して自分で作った方が早いなっていうところからスタートしたんです。彫金の世界については何も知らない状態だったんですけど、器用な方だという自覚があったので、いつか理想なものができるだろうっていう感じでした。彫金教室に通い出してからは、オリジナリティというか自分の好みに合わせて色々作りたいっていう気持ちが強くなっていきましたね。」

ー彫金の世界に足を踏み入れてからはどれくらいになるんですか?

「彫金教室には2年半から3年くらい通っていました。彫金の世界がだんだん面白くなってきたんですけど、教室に通い続けて教えてもらうっていう状況がだんだんむずかしくなってきたんです。その時、これはブランドに入ってしまえば、給料をもらいながら学べるんじゃないかって思ったんです。札幌で探してみたんですが、彫金職人として働ける場所はなかったので東京で探しました。そしてたまたま受かることができたんです。そこで3年ほどお世話になったのですが、ブランドの立ち上げに携わったデザイナーがいらっしゃったので、その人に直接話を聞いて色々学べたことがすごくいい経験になりました。」

ーものづくりのスタンスを教えてください。

「とりあえず全部に通して自分の欲しいものしか作らないっていうことですね。素材に対して特にこだわりはありません。最初に作った商品も自分が欲しいなあって思って作ったものです。その時はすごく太いガッチリとしたデザインリングを作りました。あんまり他のブランドでは見ないような、関節と関節を埋めるくらいのサイズがあるものにしたくてデザインしました。なので、身につけているアクセサリーはほとんど自社商品です(笑)。」

ー結婚指輪の製作と自社商品の製作での違いはありますか?

「オーダーメイドの結婚指輪を製作する時は、一生身に付けるものだと思って、色味や形などをお客さん主体で話を聞いてデザインしていきます。私の意見としては、そのデザインだとつけにくいとか、細すぎて構造が脆いとかそれくらいで、あとはお客さんに決めてもらいます。自社製品だと、まずは自分がどんなものが欲しいのかっていうのが常に頭にあるのでそれを形にしていきます。なので、アウトプットの仕方が全然違いますね。どちらの製作でも思い入れはあるのですが、友人のために製作した結婚指輪は特に思い入れが強いですね。」

ーどうやってデザインを考えているんですか?

「私は絵が下手なので、自分で描いても想像ができなくて(笑)。なのでいきなり作ります。自分の指のサイズを測って、厚みとかを考えながら製作します。良さそうなものができるとシルバーなどの素材で出し直したりします。試行錯誤を繰り返して自分の求める形を作り続けるといったスタイルですね。」

ー新しいデザインを考える際に、産みの苦しみはありますか?

「めちゃめちゃあります(笑)。作っている途中にこのデザインはダメかもしれないって迷ってわからなくなってきた時は、他のブランドの商品をたくさん見て、良いところや悪いところを自分なりに分析して、なるべくどのブランドにもなさそうなものをイメージします。以前勤務していたブランドのデザインの癖が出てしまうことがあるので、最初にそのブランドの商品をチェックして、似ているものを作ってしまっているときはボツにします。どうしてもデザインがうまくいかないときは、1度寝ます(笑)。寝て起きると、考えていた時間から離れることができるので、作っていたものを俯瞰で見れるようになるんです。さっきまでごちゃごちゃ考えて作っていたデザインの良い悪いがはっきり見えるようになります。一つのデザインに対して没頭しすぎて時間をかけてしまうと、あまりいいデザインじゃなくても、かけてきた時間がもったいなく感じてしまい、途中で抜けられなくなってしまいます。なので、一回寝て、忘れて、もう一度見ることが自分の中では大事なルーティーンです。」

ーどのようなイベントに出店していますか?

「知り合いの紹介で出ることが多いです。昨年札幌三越のイベントに出店したときは、出展者の方と前の職場の先輩が知り合いだったことから紹介していただき参加しました。この出会いはとてもいいきっかけになりました。彫金系でイベント出店をするなら、バイヤーさんを探すより、つてを探した方が早いという感じかな。」

ーブランドの認知度を上げるために取り組んでいることはありますか?

「今はインスタグラムやフェイスブックで告知をしたり定期的に更新することですね。あとは、知り合いの美容室やカフェなどに商品やフライヤーを置かせていただいたりしています。」

ー今後の目標を教えてください。

「年2回のペースで新作のデザインを製作していきたいと考えています。夏物と冬物といったようなイメージで、シリーズ展開していきたい。あと、来年に東京の展示会に出します。モデルさんや、雑誌の編集者の方、バイヤーさんなどがたくさんいらっしゃるので、出す価値がすごくあるんです。自分のブランドを成長させていくためにもとても意味があると思っています。これまでのイベント出店で商品数もかなり増えたのもいいタイミングだと感じています。」

ーこれからものづくりを始めようと思っている方へアドバイスをお願いします。

「彫金系の分野の場合は、自分で初めて見るよりも、誰かに習った方がいいと思います。独学でやり始めて、それが間違った方法だと気づかずどんどん進めてしまうと、後々通用しないことが増えていったりします。まずは教室を見つけて、体験でもいいからやってみて、ちゃんとした技法を見てみてから自分でやってみた方がいいと思います。そして、何処かのタイミングで自分の仕事にできればいいのかなって。「学ぶ」ということが大事だと思います。」

ー今後SHAREに期待したいことはありますか?

「火を使ったワークショップを開催したいですね。火が使えると、閉じてるリングが作れるので!」

 

ーありがとうございました!では、ここから奈良さんにバトンタッチします!

①デザインを決める。

奈良さんー「今回は真鍮という素材で作ったデザインを用意しました。厚みがあって細身のタイプから、薄くて太めのデザインもあるので、自分の好きなものを選んでください。」

お客さんー「表面にいろんな模様がついていて可愛いですね!」

お客さんー「どれにしようか迷っちゃうなあ。。。」

②指のサイズに合わせて素材をカットする。

奈良さんー「太いデザイン用のリングゲージと細いデザイン用のリングゲージがあるので、自分の選んだデザインに合わせて号数を調べてください。もし抜けなくなってしまった人は、リングゲージを上下に動かしながらずらすのがコツです(笑)。

③カットした断面をやすりがけする。

奈良さんー「人差し指と平行にヤスリを持ちそのまま握ります。この形を保ったままテーブルなどの硬い場所を支点にして、ヤスリの端から端まで押して角を削っていきます。あまりやりすぎると短くなってしまうので、肌でこすっても痛くなければ大丈夫です。」

お客さん「つい無心になってやすりがけしてしまいますね。」

④刻印を打つ。

奈良さんー「今回は、アルファベットと数字、&、toの刻印を用意しました。打刻印の凹んでいる方を自分の方に向けて持ち、1回で打ち込みます。Iや1などの表面積が小さい文字はあまり力を入れて打ってしまうと歪んでしまうので気をつけてください。」

お客さん「文字をまっすぐ並べて打つのがすごく難しいですね。」

⑤曲げる。

奈良さんー「芯棒の上の方にリングを対象に押し当て、しずく型に折り曲げます。それを反対に差し込み直す作業を繰り返していきます。徐々に下に下げていくにつれて丸くなっていくのですが、指で曲げるのに限界がくると思います。その時は木槌(きづち)で叩いて丸にしていきます。たまに下から覗いて、リングと芯棒の隙間がある場合はそのポイントを叩いて真円に近づけていきます。」

お客さん「指輪になってきた!」

⑥磨く。

奈良さんー「最後に研磨剤を使って磨いていきます。研磨剤で磨くと、表面を鏡面に仕上げることができます。着用後に油などを吹かないで放置すると、黒っぽく酸化してしまいます。その時は中性洗剤で洗ったあと、重曹でクリーニングしてあげると磨いた時の輝きに戻ります。指輪の内側を、透明のマニキュアでコーティングしてあげると、金属アレルギー反応を防ぐこともできます。」

お客さん「すごい綺麗に仕上がりました。うっとりして見惚れてしまいますね。」

creators file 第6号の奈良知明さん、ありがとうございました!また奈良さんと一緒にワークショップを開催していきますので、皆様のご参加を心よりお待ちしております!

SHAREGARAGEは作家さんの活動をサポートしていきたいと考えています。ワークショップを開催したいけど場所がない、自分で広報活動をする余裕がない、などの問題を一緒に解決していくことができます。また、レーザーカッターやUVプリンターといった多彩な工作機械とコラボレーションしたワークショップを企画開催することもできますので、ぜひご相談ください!

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