温もりのあるストーリーを緻密な線画で描く イラストレーター 濱里楓さん
札幌を中心に北海道で活動するクリエイターを、多彩な工作機械だけでなく情報発信からも応援したいとスタートした「 SHAREGARAGE ~ SAPPORO ものづくりコミュニティ~」。今回インタビューのマイクを向けたのは、ペン1本で緻密な描画で温もりのある世界観を表現するイラストレータの濱里楓さん。オリジナルポストカード展やモノヴィレッジなどのイベントにも出店しています。濱里さんがものづくりに目覚めたきっかけから現在の活動や目標についてお聞きし、濱里さんの緻密なペン画作品をSHAREGARAGEのUVプリンターを使って、オリジナルのキャンバスプリントを制作した様子をレポートします!
濱里楓さん イラストレーター
「隣にそっと寄り添う絵」をコンセプトに、イラストをオリジナル雑貨に展開している。
ボールペンなどを使用した線画を中心に物語を感じられるような、あたたかい雰囲気の絵をイラストを制作。絵を通して、見知らぬ誰かへ小さくても何かを届けることができるような活動を目指している。
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https://twitter.com/hamasatokaede
とにかく“かく”ことが好きー
ー濱里さんがものづくりに目覚めたきっかけを教えてください。
「幼稚園の頃からものづくりとか、絵を描くことの方が好きでした。その時は昔好きだったアニメに出てくる小道具を自分で作ったりしてましたね(笑)。中学、高校では美術部に入っていて、がっつり絵を描くっていうより友達とお話ししてる時間の方が長いみたいな、先生も自由に色々やらせてくれる雰囲気で居心地が良かったです。その頃は結構写実的な油絵の作品を制作していましたね。あと、小学2年生の頃から12年間習字も習っていたので、絵でも文字でもとりあえず“かく”ことが好きでした。」
専門学校に進学した理由ー
ー高校を卒業したら美術系の学校に進学しようと考えていましたか?
「最初から考えていたわけではなかったです。私が通っていたのはいわゆる進学校で『勉強勉強、大学大学』って感じで、途中で勉強が嫌になっちゃったんですよね。頑張りすぎたのかな。周りはみんな『〇〇大学に行く』って言ってたけど、私は別にそんなふうに思えなくて。美術部では油絵を描くことが好きだったんですけどこの先もずっとやりたいのかがわからなくて、でも絵は描きたくて、でも進路を決めなきゃいけないって悩んでました。。。そんな時に美術の予備校に友達と行くことにしたんです。美大とかに進学するんだったらそういうとこに通わないと受からないじゃないですか。結局自分には合わなくて辞めちゃったんですけど、そういう方向性じゃないところでものづくりとか絵を描くことができる道はないのかなって探していた時に“専門学校”っていう場所があることを知ったんです。」
ー専門学校ではどんなことを専攻していたんですか?
「学科を選ぶ時に“イラスト”とか“デザイン”ってあったんですけど、私はデザイン学科を選択しました。デザインって言われてもよくわからなかったんですけど、コラージュとか色んな技法に興味があったので。おかげで全く利用してこなかったパソコンも使えるようになりました。漫画はよく読むし、好きなイラストレーターさんもいたんですけど、今まで絵画っぽい作品しか制作してこなかったこともあってイラスト学科には進みませんでした。」
紙とペンがあれば作品を作れるー
ー今の画風になったきっかけはなんですか?
「卒業制作の直前くらいからペン画で描き始めたと思います。それまで私自身が制作していた絵画だと観てもらえる幅が狭いように感じたので、もっと身近に観てもらえて広告とかパッケージに使えるような絵ってどんな感じだろうってことを考えてたんです。最初はアクリル絵の具を使って厚塗りして描いてみたりとか、他にもいろんな描き方をしたりしてすごい迷走してました(笑)。そんな時、ペンを使って作品を描いてみたらすごく楽しかったんです。ペン画だと、紙とペンがあれば描けるっていうのもいいんですよね。個人的にはいろんな色を使った綺麗な絵とかを見るのは好きなんですけど、自分で描いてみると視界の中に色がありすぎてわけがわからなくなるんですよね(笑)。なのですごい疲れるし、全然進まないし、思い通りに描けないし。。。だから原画の時点で1色で完結する今のスタイルが自分に合っていたんです。」
濱里さんの卒業制作展示の様子
いろんなカタチで使える絵をー
ー現在の活動について教えてください。
「作品制作をメインに活動しています。普段は自分でテーマを決めて描いているんですけど、イラストレーターとしてお仕事を受けることもあるので、そういう時はお客様の要望やテーマに合わせて描くこともできます。ペン画って密度が高くて黒っぽい印象を持つ人もいらっしゃると思うんですけど、色を塗るように余白の多いイラストにすることもできるのでいろんな雰囲気のデザインに落とし込めると思ってます。」
ー最初に作った商品はなんですか?
「毎年4丁目プラザで開催される『オリジナルポストカード展+P』っていうイベントに作品を出させていただいたのが最初の商品でした。そのイベント以外でもポストカードを販売するために家庭用プリンターで作っていたんですけど、質と量の問題から外注に切り替えました。そこから缶バッチやレターセットなどの雑貨小物なども制作販売するようになりました。」
作品にはストーリー性と統一感をー
ー作品のテーマはどうやって決めてるんですか?
「描きたいものを最初に決めます。例えばこれは3枚で一つの作品で『1~3号室の子供部屋がある』っていう設定なんです。この作品を制作した時は展覧会に出る予定だったので、バラバラのテーマの作品を描くんじゃなくて統一性をもたせたいっていうのがあったんです。最初は『秘密基地的なものを描きたい』っていうところからスタートして、船とか描いたら面白いかなとか、海賊っぽいモチーフを入れようかなって感じでテーマから派生させて設定を考えていきます。」
ー普段どのように制作しているんですか?
「下描きはシャープペンです。でも私の作品は線が細かいので、下書きが完成するまで描いちゃうと自分の手で線が消えちゃうんですよ(笑)。なので、ある程度描いたらもう本描きも同時に始めて、描き足したいものがあったらその時また下描きを追加していくって感じです。全部描いてから消しゴムで消しちゃうと、ペン入れした線も消えちゃうっていうのがよくあるので。。。デジタルで描いてみたこともあったんですけど、ペンタブじゃ自分の思ったような線や輪郭が描けなかったんですよね。着色はアクリル絵具などを使って製作してパソコンに取り込むこともあるんですけど、基本的には原画を取り込んでフォトショップで着彩、編集することの方が多いです。」
ー緻密なペン画制作で気をつけていることはありますか?
「ちゃんと考えないで描き込むと、画面が同じ色合いになっちゃうんですよね。なので“濃さの違い”みたいなものを気をつけて製作しています。あと最初から色をつけることを想定している時は全然書き込まないです。ただ、原画としても観てもらいたい作品を制作する時に、他の場所とは対照的に白くするはずだったスペースにも間違って書き込んでしまうことがあって、そうなるとどんどん画面が黒くなっていきます。塗りつぶさないと絵の辻褄が合わなくなるので(笑)。」
アイデアが出ない時は考えないー
ー産みの苦しみはありますか?
「常にあります。私は別にポンポンアイデアが浮かぶ作家じゃないので。アイデアが出ない時、状況として作品制作に追われてない限りは考えないことにしています。私の場合、作品をガーっと作っちゃうと頭の中に何もなくなっちゃうんですよね。出し切った感じになっちゃって。。。そういう時は本を読んだりとか、旅行に行ったりとかして頭の中に新しい情景やモチーフをインプットします。あとは作家友達と喋ってる時に『これいいね』とか『あれ作ってみたいよね』とか、そういう会話をしてると製作意欲が出てきたりして描けるようになったりします。」
お客様とのふれあい、作家さんとの繋がりー
ーどんなイベントに出店していますか?
「私はあまりイベントに参加できてないんですけど、4プラのポストカード展、モノヴィレッジ、チカホで開催されるイベントなどに参加してきました。今年のはじめに、東京で行われた商談会にも初めて参加しました。まだ自分のお仕事に直接繋がるようにはなってないですけど、イベントに出ればお客様の声を直接聞くことができるし、同じイベントに出ていた作家さんと別のイベントでお会いしてお知り合いになれるのも嬉しいです。私の周りにものづくりをしている知り合いの方がいないのですごく貴重なんです。道外のイベントに出ると道内で活動しているだけでは出会えない作家さんとも繋がれるんです。あとは、お仕事広げたいって考えた時に、自分の作品が客観的にどうみられるかっていうのも大事だと思うんです。」
2017年のモノヴィレッジに出店した時の様子
個展開催にネットショップ開設。。。やりたいことはいっぱいー
ー今後の目標を教えてください。
「今年は今までずっとやりたかった個展を開催したいなって思ってます。あとはネットショップを開設したいです。どうしてもお客様が直接商品を見れるイベントが少ないので、そういった環境を整えていこうと思っています。もちろんイラストレーターとしては自分の絵が使われたグッズや広告が使われたいっていうのもあります。最終的には、自分自身で雑貨屋さんをやりたいなあって。できればの話ですけど(笑)。」
やりたいことを諦めないでほしいー
ーものづくりをしたいと考えている後輩に向けてアドバイスはありますか?
「私は進学校出身で先生や周囲の人たちにも『大学行かないの?』って、それしか言われない環境の中にいました。自分のいる場所とやりたいことが違ったりした時に、周りにいる大人たちからのアドバイスは、良くも悪くも自分の経験してきた事の中でのことになるので、自分のやりたいことがはっきりしているならそれをやっていいと思います。辞めるのはいつでもできると思うので、諦めないで続けてほしいなって。。。これは私自身にも言えることですけどね(笑)。」
ここからは濱里さんにSHAREGARAGEのUVプリンターとコラボレーションしてもらいました。
Adobe Illustratorでデータ作成ー
スタッフー「イラストレーターでデータを作成していきます。データの配置場所を設定してあげれば印刷データは完成です。特に難しい操作はありません。今回作るキャンバスプリントの場合は、印刷データを実際の制作物より『少し大きいサイズ』で作ってあげることがコツです。」
濱里さんー「こんなに簡単なデータ制作でいいんですね!」
Adobe Captureを使って手書サインを取り込むー
スタッフー「『Adobe Capture』という無料アプリがあるんですけど、これを使えば手書の文字や絵をイラストレーター用のデータに変換してくれるだけではなく、直接パソコンの中にデータを送信してくれることもできるんです。これを使って濱里さんのサインを取り込んで白の特色インクで出力してみましょう。」
濱里さんー「手書の雰囲気を残したまま作品を作れるのはすごく嬉しいです。どんな感じになるのか楽しみです!」
印刷物をセッティングするー
スタッフー「データが完成したので早速印刷してみましょう!キャンバスを置く場所を先に印刷しているので、その場所にセッティングしてください。」
濱里さんー「こんな感じかな。。。ちょっと緊張しますね(笑)。」
印刷開始ー
濱里さんー「すごい印刷が早いですね!青く光っているのはなんですか?」
スタッフー「青く光っているのは『 UV(紫外線)ライト』です。印刷と同時にUVライトを当てることでインクを硬化させています。終わった時にはもうカチカチに固まってますよ。」
印刷終了ー
濱里さんー「10分もかからないで印刷ができちゃうんですね。あ!本当にインクが固まってます!こんなに早く商品ができるなんて驚きました。」
スタッフー「今回は1個ずつ制作しましたが、横に並べて印刷ができれば2個同時に制作したとしても同じ時間で制作できたり、やり方によっては効率的に商品製作ができます。」
SHAREGARAGEを利用してみてー
ー今回UVプリンターを使ってキャンバスを作っていただきましたが、どうでしたか?
「こういうものを外注でお願いすると、1、2個だけ試しに欲しいって時もまとめて頼まないとだめとかってあるじゃないですか。なのでSHAREみたいにそれをいろんな絵柄でちょっとずつ作れるっていうのはすごいいいと思います。あと、外注先と違って実際に作っている様子を見ることができるし、すぐに形にしなくても自分の中の候補としてきっかけづくりができる場所があるのは貴重だと思います。」
ー今後SHAREに期待したいことはありますか?
「今回のコラボレーションのような形で、札幌で活動しているイラストレーターさんをどんどん特集していって欲しいです。そういうことをきっかけにして、同じようなことをやっている人たちと交流できるイベントをぜひ企画していただきたいです。」
creators file 第12号の濱里楓さん、ありがとうございました!
SHAREGARAGEではものづくりをするアーティスト、クリエイターの方たちをサポートしていきたいと考えています。UVプリンターやレーザーカッターといった工作機械に興味があるけどどんなことができるのか、自分のやりたいことを実現できるのか、そんな風に考えている方は、幅広い作品制作の可能性を広げるスタッフサポートまでお気軽にご相談ください!

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